左斜め上からジュエリー業界を元気にする中小企業診断士 広岡徹也です。
今日はトラブらない事業承継(株式の譲渡)について考えていきます。

先日 中小企業の事業承継・M&Aについてのセミナーに参加した際に、衝撃的な
アンケート結果について話をされていました。
経営者の奥さん100人へのアンケートで、ご主人(社長)が亡くなる際に残されて最も
困るものは?と聞きました。

株式アンケート
答えは ダントツで経営する会社の株式です(34%)
次点が美術品・骨董品(11%)ですから、圧倒的な1位となっています。
奥さんにとっては、大概において要らないというものですが、経営を引き継ぐ後継者に
とって株式は非常に重要な財産です。


仮のケース(社長の財産を引き継ぐ相続人として、奥様、長男、次男の3名)で考えて
みましょう。
事業承継の本質はシンプルに考えると以下の2つがポイントとなります。
1.次期社長を誰に据えるのか?
2.株式を誰に持たせるのか?

親族内承継で考えた場合、1と2を必ずセットにすべきであり、例えば長男に
社長を任せると決めたなれば、株式も長男に集中して渡すのがトラブらないやり方です。
株式も他の財産(現預金など)と同様に、分けやすいからと言って 法定相続割合に則って
分けると(ここでは奥様 1/2、長男1/4、次男1/4)株式が分散し、後々に後継者(長男)に
とって災いを招く危険があります。

実際によくあるケースで言えば、奥様と次男が会社にノータッチで、元々 長男と次男の
仲が悪い。長男の経営方針が気に入らない番頭の専務(非親族)が次男と結託し、奥様も
巻き込んで株主総会で取締役解任の決議をしてしまえば、長男は社長をあっけなく解任
させられてしまいます。
(奥様と次男の2名で75%の株式保有割合となり、株主総会でこの2名が解任に賛同すれ
 ば2対1で長男を一方的に解任することが可能です)
こうなってしまうと、会社の実務を把握している番頭の専務が会社を乗っ取るようなこと
になりかねません。また、長男は長男で同一商圏で別会社を立ち上げて、会社としての力が
分散し、血みどろの戦いとなって結果共倒れになります。

ですので、長男に任せると決めたならば、株式については他の財産と切り
離して会社を引き継ぐ立場の長男に社長が持っている株式を全て渡すのが
正しい承継と言えるでしょう。
但し、株式の譲渡もあまりに早すぎると、それはそれで災いを招くリスクがあるので、自分
のリタイア時期を考えて、そこから逆算して計画的に行うことをおすすめします。

<実際にあった例>
相続時精算課税制度(2,500万円まで贈与税非課税)を活用して、社長から長男へ株式
の生前贈与を推進。
その後に社長と長男の折り合いが徐々に悪くなり、副社長(非親族)と
結託して長男が社長を解任し、会社から追い出す。

武田晴信(のちの信玄)が重臣達と協力して父・信虎を駿河に追放したような話に近い
ですね。社長もご自分のライフプランを作成のうえ、計画性を持って我慢と粘り強く
引継ぎ
を行っていかなければ自分の足元をすくわれますので十分注意しましょう。
今日はこのへんで。最後までお読みいただいてありがとうございました。