在庫の3分類

左斜め上からジュエリー業界を元気にする中小企業診断士の広岡徹也です。
第1回目の記事で、ジュエリー宝飾品の眠っている在庫は60兆円ということはお伝えしました。今日はそのあたりを少し深堀りし、ジュエリー宝飾品をお持ちのお客様(以後オーナー様と記載します)の在庫について考えてみたいと思います。オーナー様のジュエリー宝飾品在庫は、どれも同じように塩漬けになって置きざらしになっていると思いきや、実際はそうではありません。
過去に蓄積したデータを元に検証しましたが、以下の通り、3つに分けることができます。    (別紙画像もご覧ください)
1)絶対に売らないもの 
  例:エンゲージリング
2)使わないが何となく持っており、一旦取り置いているもの 
  例:百貨店宝飾で買ったパライバトルマリンのリング 、遺品として親族より受け継いだもの
3)不要と判断、売却・整理処分するもの 
  例:喜平のネックレス
この3つのセグメントのうち、最もボリュームの大きいものは何でしょうか?
正解は2)で、オーナー様の在庫全体(個数ベース)の52.2%を占めます。
ちなみに、1)が11.6%、3)が36.2%です。
要はジュエリー宝飾品の場合、デザインも古いので身に着けないが、過去 買取ショップなどに持ち込んで査定してもらった金額を見て愕然(100万で買ったものが7万円と査定)として、売ることができずに何となく持っているというケースや、祖母や母から遺品としてもらったが、何が何なのか分からず取り合えず持っているケースが非常に多いのです。
ジュエリー小売店の皆様は、絶対数が最も少ない1)のエンゲージリフォームを力を入れて狙ったり、3)で総合リサイクル業者と買取価格を競って血みどろの戦いを繰り広げるのではなく、絶対数が多くオーナー様もどうすれば良いか分からない2)の需要喚起・問題解決に注力すべきと考えています。
ジュエリー宝飾品の場合、家や車などと違って保管場所を取らない、洋服、バッグ、靴などと違って経年劣化が少ない(=素材としての資産価値は残る)ため、この何となく消極的に保有するという行動が起きているのが実状です。
こういった場合、ではどのようにすれば良いのでしょうか?
例えば、高値で買い取ります! 1,000種類のリフォーム枠をご用意していますので、カタログをご覧ください。などの対応で良いのでしょうか?
答えは×です。
オーナー様は、金額的な価値について、過去査定していれば把握していますが、付いている石がそもそも何で、グレードは良いものなのかなど本質的な価値は分かっていないことが大半なため、価値把握のお手伝いをしたうえで、専門家の立場で相談に乗るのが正しい対応と考えます。
ご自分で買ったケースのほか、昔付き合っていた人からもらったとか、亡くなった祖母もしくは母から
遺品として譲り受け、何が何だか全く分かっていないということもよくあります。
あと、私自身が感じることとして、日本人は奥ゆかしいということです。オーナーの方々と話をしていても、最初はジュエリー宝飾品はあることにはあるが、昔祖母からもらったもののガラクタばかりで人に見ぜるのは恥ずかしいわという声が非常に多いことです。
実際に拝見すると、そんなことはなく平気で10万、20万するものがチラホラあったりしてこの石は〇〇産の非加熱のルビーで非常に良いものですよ、などと補足説明をして差し上げるとオーナー様は大変喜んでくださり、そのうえであれこれ相談に乗って結局 普段使い用のネックレスにリフォームするわと言って成約になります。
なので、譲り受けた方々との思い出もひっくるめたジュエリーへの「想い」は寄り添って傾聴しつつ、品物としての価値把握・情報提供はプロとして行い、最終的な出口はオーナー様と一緒になって考えてプロの意見も添えてアドバイスする、これがあるべき姿であり、サービスにおける付加価値なのではないかと考えています。