左斜め上からジュエリー業界を元気にする中小企業診断士の広岡徹也です。今回は山梨県のスーパー「やまと」を取り上げたいと思います。実はこの会社、他の方々のSNSの投稿で知ったのですが、中小企業診断士の平成22年度の2次試験のマーケティングの事例として、取り上げられていました。余談ですが、私もこの年に2回目の診断士試験を受験し、何とか合格に至ったため、鮮明に記憶に残っています。生ゴミを店舗に持って来れば処理機で堆肥にしてそれを地場の農家に提供して野菜として販売する・・・。今の時代に即した経営をやっておられるなと当時余裕がないなかでもすごいなと思っていました。最後の面接でもそんな話を試験官に話したと記憶しています。 
やまと
                                                        

その会社が昨年末に自己破産し、その社長さんが書籍を出したというので、「こうして店は潰れた」を早速読んでみました。こちらの内容は、地域で頑張っておられるジュエリー小売店の皆様にも是非知っておいてほしいものなので、ご一読をお勧めします。
                                                      
私も面識はありませんが、若いころに食品メーカーに勤めて問屋やスーパーマーケットのバイヤー相手に営業していたほか、信用調査会社にて企業調査や倒産取材をしてきた経験も踏まえると、本に書いてあることが具体的に想像でき、とても他人事とは思えませんでした。やまと元社長の小林さんのやられたことは、前社長のしがらい排除の各種改革(取引先や従業員入れ替え)、地域土着で地域のお客様が喜ぶことは即断で行う(過疎地域に車で移動販売するなど)ことや被災地支援など、素晴らしいの一言に尽きます。ただし、一つ教訓とするならば、新規出店の是非のような会社の経営に多大な影響を及ぼす案件については、企業の存続をシビアに考えて冷徹にジャッジをしていくといことではないでしょうか?私も前職でジュエリーのオーダーリフォームや買い取りを行う店舗の開発・営業を行っていましたが、相手から来た話のほぼ100%は断っていました。相手から来る新規出店の話は、大概 その場所で思ったよりも売れなくてテナントが撤退して空いている・・・だから出てくれみたいな話が大半でした。その場所で当時勤めていた会社が後釜で入ってこちらが描く収益は実地で調べても見込めない、ただし相手はマイナス情報は伏せて良い情報ばかり言ってきます。
ですので、情や楽観的な推測や相手の話を鵜呑みにすると、大概の新規出店はうまくいきません。地域貢献に資する慈善事業であれば何も問題はありませんが、営利目的の企業なので見込む収益が出るか、出ないのか最終的な判断材料はこの一つしかありません。
本書では、クレーム対応や新商品(298円の弁当開発)の話のほか、倒産後の従業員の再就職の斡旋など、トップダウンでやりきらなければいけない局面において、経営者としてあるべき対応をきっちりと取っていて、これらはなかなかやろうにも、できることではありません。引き込まれしまい、あっという間に読んでしまう内容でした。